今回は動画を撮影する時の照明の大切さについてお話をします
多くの方は照明のことを「暗い空間を明るくする」ことだとしか思っておられません
映像制作のしごとをしていた時、見積書の照明の項目について
「そもそも明るい部屋で撮影をするのに照明のための機材や人件費って意味がわからない」
と言われたこともありました
でも照明というのは被写体をいかにキレイに撮影するかのキーポイントです
動画に限らず、撮影をするということは光をとらえる行為です
だから被写体にキレイな光が当たっていない限りキレイな写真・動画は撮影できないのです
よく作品などをご自分で撮影して「なぜプロのようにキレイに撮れないのだろう?」と思われる方がいらっしゃいます
プロのフォトグラファーというのは照明をする、つまり被写体に当たる光を整えるのが仕事という感じです
映画の世界などではその部分を専門職の「照明さん」が担っています
私は社会人としての第一歩を大阪のテレビCMの制作会社で踏み出しました
最初に担当したCMは人物のいない、部屋のセットだけの情景CMでした
セットというのは本物の部屋と同じように精密に作られていますが、それだけではつまらないものです
ところが、腕のいい照明さんが光を当てると、朝の光、夕方の光などが窓から差し込んできて、情感が生まれるのです
人物がいなくても、セットと小道具と光だけで物語を感じさせてしまうのには感心しました
ちょっと昔のお話をしましょう
40年ほど昔、私が制作会社に入社した当時は、照明さんといえば映画の経験者ばかりでした
そうした照明さんのひとりに聞いた話です
昔、まだテレビができる前、大衆の娯楽の頂点といえば活動写真、映画でした
大きな映画会社にはあらゆるスタッフ、キャストが所属していました
俳優も今のような芸能プロダクションではなくて、映画会社に所属していました
売り出し中の若手女優さんなどは、撮影所の「大部屋」というところに所属します
まだ個人の楽屋などもらえないので、大きな支度部屋で自らメイクなどをして出番を待つわけですね
こうした大部屋女優さんの中で先輩から後輩に語り継がれる教えがありました
それは「売れたかったら照明技師さんと仲良くしろ」
照明技師というのは、照明さんのボスです
作品全体の照明を決める人です
そしてこの人しだいで映画全体の映像の質が違ってくるので重要なポジションでした
新人の女優さんたちは故郷の名産などを送ってもらっては照明技師に「お裾分けです」と持っていきます
そうやって、照明技師に可愛がられるとどういういいことがあるのでしょう?
いかに重要なスタッフであるといっても、もちろん照明技師にキャスティングに対する権限はありません
プロデューサーや監督と仲良くしたほうがいいのではないか、と思いますよね
照明技師の覚えがめでたくなると、チョイ役で映画に出た時に良い光を当ててもらうことができます
すると、画面の写りがキレイに見えるのです
それを見たプロデューサーや監督が「この娘可愛いな。次はもうちょっと出番の多い役で使ってみよう」と思う
だんだんいい役をもらえるようになって、売れていく、というわけです
もちろん大部屋女優といっても全国からオーディションで選ばれてきた美人ばかりです
しかし照明さんに嫌われてしまえば、良い光を当ててもらえず、売れてもいかない、という現実がありました
これでわかるように、照明というのはキレイに写るためには大切なことなんですね
よい照明は光のバランスを整えて、被写体の色や特徴を引き出します
部屋全体が明るくても被写体に良い光が当たっていないことはよくあります
ですから、照明だけはいい加減にしないほうがいいですね
みなさんも作品や作業を撮影する時、光には気を配ってください
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